マンションリノベーションで後悔につながった一般的なケースと、それらを防ぐための対策を具体的に解説します。例えば、予算の管理ミスや間取り・デザイン上の不満など、ありがちな失敗を取り上げ、マンションリノベーションを成功に導くポイントを解説します。近い将来にリノベーションを計画している方は、このページを参考に、後悔しないリノベーションを実現してください。
中古マンションのリノベーションで後悔しないためには
画像はイメージです。
マンションリノベーションをする際は、気に入った立地に中古マンションを購入して自分の思い通りの空間を作るという選択肢があります。
しかし、全てを自由にリノベーションできるというわけではなく、建物に構造上の制約がある場合など、手を加えられる範囲にはある程度の制限があります。
それらの点を事前に確認せずに購入し、「さて、思いどおりにリノベーションをしよう」という段階になって初めて、「できないこと」が判明することもあります。また、リノベーション会社への確認・相談が遅れてしまうと、希望する工事内容や予算などの調整が間に合わず、満足のいく結果を得られないという事態も起こり得ます。
つまり、中古の分譲マンションを購入し、さらに費用をかけてフルリノベーションを施すとなれば、リノベーション会社の選定も含めて、より慎重に進める必要があるということです。
そこで今回は、マンションリノベーションでの後悔を避けるために、具体的な事例を元に、それぞれの課題への対策をご紹介します。
中古マンション購入時の後悔事例?
マンションリノベーションを前提に購入した中古マンションが、事前確認が十分ではなかったために理想とする計画を実現できなかった例や、工期が長引いてしまったために、予定よりも費用がかかった例と対策についてご紹介します。
修繕積立金や管理費が高かった
分譲マンションを購入すると、新築、中古に関わらず一般には購入時の費用以外に修繕積立金や管理費など、毎月の費用が発生します。
修繕積立金の金額や滞納状況の確認を
修繕積立金とは、その資産価値や安全性、快適性を維持、またはより良くするために、10年から10数年という周期で大規模修繕を実施するための費用です。
この工事はマンション建物の外壁の補修や塗装、建物全体の配管の修繕など、劣化が進んだ箇所に対して行われます。工事の規模はマンションの大きさや築年数に応じて大掛かりになります。特に、築30年以上、世帯数が多いといったマンションの修繕工事は大規模になる傾向があります。
大規模修繕工事には平均1億1000万円〜1億5000万円ほどかかると言われています。例えば、令和3年に国土交通省が実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、半数以上が一戸あたり75万円以上の費用を負担しています。
そのため、マンションの管理組合は、管理費とは別に「修繕積立金」として毎月一定額を徴収し、来るべき工事に備えるのが一般的です。工事の必要が発生した時に一括して徴収するのでは、その費用が集められない可能性が大きいからです(居住期間の長短によって徴収額に不公平感が生じるという問題もあります)。
購入する中古マンションによっては、近い将来に一時金を支出することになり、実質的な購入額が上がることもあり得ます。また、管理組合が適切に機能していないなどの理由で、「長期修繕計画」が作成されていないケースもあります。あるいは、屋上からの雨漏りといった比較的規模の大きい修繕が必要なことが突然発覚し、居住者から一時金を徴収せざるを得ない状況に陥るかもしれません。
いずれにしても、購入決定前の「重要事項説明」の段階で、修繕積立金の実態や建物の状態をしっかりと確認する必要があります。
管理費の見通し
管理費の値上がりの可能性についても事前に確認しておくことをおすすめします。一部のマンションでは、年数の経過とともに段階的に管理費が引き上げられる場合があります。購入当初は負担可能な金額であっても、将来的に管理費が上昇し続けるかもしれないことを念頭に置いておかなければなりません。
新耐震基準を満たしていなかった
中古マンション購入時に特に注意すべきなのが、建物の耐震基準です。2024年時点で最新となる「新耐震基準」は、1981年に施行されたもので、1981年より前の物件に適用されているのが「旧耐震基準」。さらに1971年より前の物件は、「旧耐震基準」より古い「旧旧耐震基準」が適用されています。
新耐震基準と旧耐震基準の構造上の大きな違いは、鉄筋コンクリートの強度です。旧耐震基準の建物の鉄筋の量は、新耐震基準の建物の鉄筋の量よりも少なくなっています。
1981年より前に建設された中古マンションを購入する場合、建物が「新耐震基準」へ適合されているかの確認が重要です。もし、マンションが「旧耐震基準」のままだった場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 耐震改修費用負担の合意
マンション全体を新耐震基準に適合させるためには、耐震診断に数百万円、耐震改修工事に数千万円以上の費用がかかると言われています。この費用について、居住者で合意し、分担することに賛同できそうなのか確認する必要があります。 - 地震に対する不安
耐震性を高める工事を先延ばしにした場合、大規模地震発生時の建物の安全性に不安を抱えながら生活することになります。
以上の点を考慮し、中古マンションを購入する際は、建物の耐震性についての十分な確認が必要です。
なお、国土交通省が2019年に発表したデータによると、全国の中古マンションのうち、約17%が1981年以前に完成したものです。ただし、これらのマンションの中には、以下のようなケースが含まれています。
- 新耐震基準を見据えて建設されたマンション
- 築年数は古いものの、新耐震基準に適合するように耐震改修工事が行われたマンション
つまり、1981年以前に建設されたマンションであっても、必ずしも全てが旧耐震基準のままというわけではありません。つまり、中古マンションを購入する際は、築年数だけでなく、以下の点も確認することが重要です。
- 建設当時の耐震基準のレベル
- 完成後に耐震改修工事が行われたかどうかとその内容
これらの情報を踏まえた上で、マンションの耐震性を総合的に判断しましょう。情報収集や購入判断に当たっては、リノベーション会社のアドバイスを参考にするとよいでしょう。
引っ越しのスケジュールが間に合わず仮住まいが必要になった
中古マンションを購入し、リノベーションを行う際に注意すべきポイントの一つが、工事のスケジュール管理です。工期が遅延した場合、次のような問題が発生する可能性があります。
- 仮住まいの必要性
リノベーションが完成した住居に直接住み替えることができず、現在の住居から仮住まいへ引っ越さなければならなくなる場合があります。その結果、追加の家賃や引っ越し費用などの余分な出費が発生します。 - 工事遅延の責任と費用負担
工事の遅れが施工業者の責任である場合、契約書に損害金について記載されていれば、費用負担を請求することができます。しかし、天災などの外的要因による遅延の場合は、その限りではありません。
リノベーション工事を計画する際は、以下の点を契約時に詳細に確認しておくことが重要です。
- 工事が予定通りに完了するかどうか
- 工事遅延のリスクと考えられる要因
- トラブル発生時のリノベーション会社の対応範囲
これらの点を事前に把握して適切な対策を講じることで、スケジュール関係のトラブルを最小限に抑えることができます。
また、中古物件購入時には、できるだけ「購入物件の契約から引き渡しのまでの期間(時期)」と「施工業者による工事開始から引き渡しまでの期間(時期)」を打合せし、明確にしておくことで、現在の住居をいつ解約するのが適切か、事前に確認しておくことが望ましいでしょう。
マンションリノベーション時の後悔事例
購入したマンションにリノベーションを施したものの、完成後に後悔してしまう典型例についてご紹介しましょう。
管理規約により理想の間取りやデザインにできなかった
和室の畳やリビング、寝室のカーペットの床をフローリングにしたいと希望しても、マンションの管理規約によって制限されている場合があります。上下階の床音によるトラブルを防ぐために、管理規約で床材の性能レベルを規定している場合が多く、フローリングへの変更自体を禁止しているマンションもあります。
また、内装に関しては壁紙・天井の張り替えや塗装は自由に行うことができる一方で、サッシや玄関ドアの交換など、マンション全体の外観に影響する部分は共用部となるため変更できません。全てが自由にリノベーションできるわけではないことを知っておきましょう。
躯体の構造による制約もある
管理規約に基づく理由でなくても、マンションの構造自体に起因して、希望通りの間取りが実現できないというケースもあります。マンションの構造にはラーメン構造と壁式構造があり、壁で建物を支えている壁式構造では撤去できない壁があるため、間取りの変更に制限があります。
以上のように、自分の希望どおりに間取りやデザインを変更できると思って中古マンションを購入したのに、規約やマンションの構造自体の制約で、自分の希望が実現できなかったということも起こり得ます。
要望を詰め込んだら予算オーバーになった
マンションリノベーション後に後悔した理由としてよくあるのが「予算オーバー」です。リノベーション費用には各種の工事費や設備機器の購入費のほか、人件費、交通費、現場で発生する諸経費などが含まれています。なかでも、交換するキッチンや浴室の設備機器や、壁材や床材などの材料については、何を採用するかによって費用が大きく変わります。
「これよりもこれ」「もう少しグレードアップを」と要望した結果、当初想定していた予算を超えてしまうことが多いようです。
費用面に関する失敗は、リノベーション会社に変更を伝えた時に、それによってどれだけコストが上がるのか、内訳を含めて確認していなかったことが主な原因です。
決めた予算内で何を優先させるのかを、ランク分けするなどしてある程度設定した上で、リノベーション会社にアドバイスを求めるとよいでしょう。
完成後のイメージが違った
中古マンションを購入し、自分の理想の住まい実現を目指して大金を投じてリノベーションをしたのに、それが満足のゆく結果ではなかったら? その原因としては、次のようなことが考えられます。
- 自分が伝えたはずのイメージと、リノベーション会社が理解したイメージにずれがあった
- 理想のイメージを伝えたところ、きちんと理解してもらえたと思い込み、その後の確認を怠った
リノベーションの失敗を防ぎ、成功させるポイントとしては、リノベーション会社の経験値も影響してきます。経験と知識が豊富なリノベーション会社は、お客様の希望を的確に把握し、過去の実績の中からそのイメージに近いものを提示できます。さらに、パースなどの完成予想図を盛り込んだプランを共有し、可能な限り、お客様とイメージを一致させた上で具体的な設計、工事に入ります。もちろん、工事開始後も途中で、理想通りに進んでいるかを都度確認することも重要です。
マンションリノベーションで後悔しないための対策ポイント
以上のような事例を踏まえて、マンションリノベーションで後悔しないためのチェックポイントについて考えていきましょう。
中古マンションの物件状態や条件を確認する
リノベーションを行う前提で中古マンションを購入する際には、以下の点に注意が必要です。
- 購入するに値する物件かどうかの確認
まず、購入を検討する中古マンションに、すぐに解決すべき問題がないかどうかを確認します。具体的には次の点をチェックしましょう。
・耐震性
・周囲の騒音
・防音対策や断熱対策の必要性
・水漏れの有無 - リノベーションに適した物件かどうかの判断
希望のリノベーションができるかどうか、次の点を確認しておきましょう。
・管理組合が規定している修繕積立金などで、想定外の費用がかからないか
・新耐震基準を満たしている建物か
・水回りの移動など、希望する間取り変更が構造的に可能か
・管理規約によって、フローリングなど床材の変更に制限はないか
いずれにしても、不動産会社や管理組合から情報収集することは不可欠であるものの、専門家でない限り、必要事項の全てを把握することは困難です。リノベーションによって希望どおりのライフスタイルを実現できるかどうかを判断するには、専門家の調査や分析が不可欠です。物件選びの段階から並行してリノベーション会社を選定し、相談しながら購入物件を決めることをおすすめします。
リノベーションにかける予算と優先順位を決める
マンションリノベーションで理想を追い求めると、必要な費用は際限なく膨らんでいきます。リノベーションを行うにあたっては、「上限予算の設定」とリノベーションで「やりたいことの優先順位の決める」ことが必須です。まず、どれだけの資金を用意できるかを試算します。と同時に、なにを優先させるかだけでなく、あきらめる順番を決めておくことも大事です。
内装を全体的にグレードアップさせたいか、壁を取り払ってLDKを開放的な空間に造り変えたいか、水回りを全面的に交換したいか、物が見えない収納にしたいかなど、「譲れない項目リスト」と「優先順位」を作成して、それぞれにいくらかかるのかをリノベーション会社と相談しながら進めるとよいでしょう。また、何もかもを交換するのではなく、そのまま使える設備機器なのかどうかについてリノベーション会社からアドバイスを受け、出費を抑えることも考えられます。
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